「スポーツ文化と宗教観」閉店後の不定期日記 250118
下にある投稿の動画を見てほしい。
スペインのサッカークラブ「レアル・ベティス」が毎年クリスマスに行っているイベントなのだが、これが実に素晴らしい。
🇪🇸降り注ぐプレゼントの嵐🎄🎁#レアル・ベティス サポーターから一斉に投げ込まれるプレゼントの嵐!
— GOAL Japan (@GoalJP_Official) December 24, 2024
クリスマス恒例のイベントが今年もラージョ戦で開催。集められたプレゼントは、ベティス財団から恵まれない子どもたちへ贈られる。
🎥:@RealBetis_enpic.twitter.com/2gOi5dTHlr
スタジアムの出入口や通路、もしくは特設会場を設けるなどして集めれば良いと考えがちだが、これを敢えてわざわざスタジアムへ投げ込ませているのがアイデアである。恵まれない子供達へプレゼントを贈るという行為とその意識がスタジアム全体、観客全体に広がり、強烈な一体感を芽生えさせる。何よりイベントとして楽しいし、眺めているだけでも圧巻であろう。
もちろん、ピッチから距離のある座席より投げ込まれたプレゼントは届かないだろうが、それを前列で拾った観客が投げ込み、最終的にはピッチへ届く。そんなリレーも自発的に行われているハズだ。そのため固い物や角がある物といった、人に当たると危害が及ぶ物は禁止といったアナウンスもあろうかと想像できる。動画を見るとぬいぐるみが多いようで、ラッピングの有無も気にしていない。もぅ恒例行事として根付いているから観客も慣れているというか、勝手を知っている感じがする。
イヴを中心にクリスマスは「カップルの日」といった印象が強い日本だが、特に欧州における本来は『収穫を感謝する冬至のお祝いに家族や友人同士が集まって楽しく会食し、厳しい冬に備えて体力を蓄えるもの』だったようである。この集まりにプレゼント交換が付加され、家族においては子供へのプレゼントへと発展したものと考えられる。となれば、このイベントは宗教的にも意義のある、正当な理由のあるものと捉えられているのかもしれない。
こうした行事を楽しく気軽なイベントに変えるのは日本の得意技である。食においては江戸時代から「土用の丑の日」(by 平賀源内)を爆誕させてウナギを食べる習慣を根付かせ、現代においてはバレンタインデーにチョコレートを買わせ、ホワイトデーをそのお返しとし、夏に敬遠されてきたカレーを「夏こそ!」と意識変革させ、最近では節分に恵方巻きが習慣化しつつある。これらを企業戦略と断じるのは野暮というものであろう。受け入れたら文化となり、仕掛けた側の勝利なのである。
ファミリー向けだったクリスマスをカップルにおける最高級の特別な日に仕立て上げたのも日本である。これについては「クリスマスを祝った一週間後に初詣って、宗教的にどうなの?」といった意見もあるが、これには理由がある。世界的に見て最も原始的かつ日常生活に浸透している日本の宗教観である。
森羅万象、全てに神が宿る。
日本の多神教は、日常生活において、いともたやすく、何にでも神が宿るのを大きな特徴とする。山を見れば山の神様、川を見れば水の神様、海を見れば海の神様。長く使っている道具には付喪神。最近でも推しアーティストのイチバン曲は神曲である。
古来の日本にも天照大神を始めとする多くの神々は存在する。それはもぅギリシャ神話に全く以て引けを取らないほどバラエティに富んだ神々がいるのだが、それとは別に、日常生活の中に名も知らぬ、姿も知らぬ神々がごまんといるのである。「八百万(やおよろず)の神」と言われる所以である。
そんな多くの神々に見守られながら生活しているのが日本人であり、良い事があれば感謝し、悪い事をすれば「お天道様が見てるよ」と戒められる。お天道様=太陽もまた神である。ついでに言えば天照大神は太陽神であることから、名のある神々と日常の名も知らぬ神々はどこかで繋がっている。
この曖昧さが日本の宗教観を形成している。これにより、どの宗教も受け入れてきたのである。仏教が伝来した時も日本古来の宗教が一掃されることはなく、キリスト教も紆余曲折あったが最後は日本古来の宗教を残したまま受け入れた。つまり、日本人が大好きな「みんな仲良し」なのである。
それは漫画・アニメ・実写で描かれた『聖☆おにいさん』が違和感なくギャグとして受け入れられていることにも象徴されている。敬虔な仏教徒やキリスト教徒が見たら腰を抜かすような発想が可能なのは日本だけであろう。
とある神社に魅せられた外国人が「キリスト教から改宗して日本の神道を学びたい」と宮司に直談判したところ、「日本は多神教だから、そのままでいいよ」と返答されたというエピソードもある。多神教である以上、複数の神を信仰して良いし、複数の神に仕えても良いのである。
話が随分脱線してしまったが、日本でもプロ野球やプロサッカーのスタジアムで同様なイベントを行ってほしいなぁ、と思うのである。2026年から欧州と同じく秋春制に移行するJリーグならシーズン中になるため、さらに可能性が広がる。とても素敵なイベントになると思うのだが……。
ただ、実際にこのイベントがどのように催されているのかという疑問も生じる。情報不足につき、試合に影響を与えずにこれほどのプレゼントを投げ込んでも支障のない時間帯がどこなのかわからない。
動画を見る限り、試合開始前ではなさそうな気がする。プレミアリーグでもそうなのだが、試合開始の30分前でも観客の多くはまだ着席しない。慣れた観客ほど直前までラウンジやスタジアム外で時間を過ごしている。かといってハーフタイムの限られた時間で夥しい量のプレゼントを回収できるとは思えず、試合終了後は早く帰宅の途に着く人も現れる。
特別な日と告知し、特別な時間を設けるのだろうか。
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2024年までXに投稿していたマツヤ代表・鈴木の不定期な”日記”を2025年からはブログで呟くことにしました。
あくまでも心の内をボソっと呟くものにつき、敬語は用いず、「です・ます調」の表現も省き、敬称略となりますことをご了承いただきたく存じます。
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